色彩の扉

メタメリズム(条件等色)とは?

バッグ

お店で色をあわせて買った靴とバッグを身につけて外出したはずなのに、陽の光の下で見たら色があっていない、ということが起こることがあります。

この現象は、(1)光(光源)、(2)物体の色、(3)人間の知覚(色覚)の3つの要素により引き起こされるもので、メタメリズム(条件等色)と呼ばれています。
メタメリズムによって生じた予期せぬ見た目の違いは、時に私たちを悩ませます。ここでは、メタメリズムが発生するメカニズムと、メタメリズムの発生を最小限に抑える方法を解説します。

メタメリズムは、(1)光(光源)、(2)物体の色、(3)人間の知覚(色覚)によって生じます。メタメリズム発生のメカニズムを解き明かすため、それぞれの特性を簡単にご説明します。

(1) 光(光源)

光には、太陽の光や蛍光灯の光など様々な種類があり、波長の強度分布がそれぞれ異なります。下のグラフをご覧下さい。人間が感じる光の波長は、380ナノメーターから780ナノメーター(※)と言われています。自然光はほぼ平均的にこの範囲の波長を網羅しているのに対し、白熱電灯は低波長の強度が低いことが分かります。簡単に言うと、自然光と比較して、白熱電灯のもとでは低波長の色(紫や青)が見えにくい、ということを示しています。

※ ナノメーター … 0.000001 mmのこと

光

(2) 物体の色

物体の色がどのように認知されるのかご存知でしょうか?物体の色は反射される光の波長で決まります。当たり前のことですが、真っ暗な場所にある物体の色は何も見えません。それは光の反射がないからです。下の図を見てください。りんごに光を当てると、吸収される波長と反射される波長があることが分かります。りんごは長い波長(赤色)を反射するので、赤いと認識されるのです。

物体の色

(3) 人間の知覚(色覚)

(2)でも触れましたが、物体から反射された光は、人の目で知覚されてはじめて色として認識されます。人間の目には、青・緑・赤のそれぞれの波長を持つ光を感じる細胞があります。例えば、明るい場所でりんごを見た人間の目には、赤の波長を持つ光が飛び込んできます。すると、赤の波長を持つ光を感じる細胞が強く刺激されて、その刺激が脳に伝わり、赤いと知覚されます。私たちは日々様々な色を感じますが、目の中の3種類の細胞がどのような割合で刺激されているかにより、色の違いを感じています。


メタメリズム(条件等色)のメカニズム

それでは、いよいよメタメリズム(条件等色)のメカニズムをご説明します。
冒頭での「お店で色をあわせて買った服とバッグを身につけて外出したはずなのに、陽の光の下で見たら色があっていない」という現象については、「白熱電灯の下で同じように見えた二つの物体の色が、自然光の下で見たら異なって見えた」と言い換えることができます。白熱電灯の下で見た靴とバッグは、物体から反射された光がたまたま同一の波長を持ち、同じ色として人間の目で知覚されました。しかし、自然光の持つ波長は、白熱電灯とは異なるため、反射された光が同一ではありませんでした。その結果、自然光のもとでは、靴とバッグは異なる色に見えたのです。靴とバッグの物体色の特性をグラフ化すると次の通りになります。このように、光が変わることによって色が同じように見えたり違って見えたりする現象が、メタメリズムなのです。

条件等色
色差

メタメリズムを防ぐため、一部の百貨店などは、光源に留意しています。これらの百貨店などは、標準光源の基準を満たす、太陽光に似た特性を持つ蛍光灯を使用しています。

それでは印刷の場面でメタメリズムを防ぐにはどのようにしたらよいのでしょうか?
その印刷物が置かれる場所や使われる場所の光の下で印刷物の色を確認しましょう。それが難しい場合には、様々な種類の光の下で印刷物の色を確認しましょう。蛍光灯といっても様々な種類がありますので、できるだけ多くの光の下で確認することをおすすめいたします。

しかしながら、本来、メタメリズム発生防止には、色見本の分光特性(波長毎の反射の強さ)を一致させることが必要です。言い換えると、使用されている色の素である顔料の種類を一致させるということです。ところが、印刷物の種類によって顔料が異なるため、分光特性を一致させるのは困難な場合が多いのが現状です。そのような中、DICグラフィックスでは、「望ましい色合せ」をご提供することで、メタメリズムの発生を最小化しています。「望ましい色合せ」を提供するために、オリジナルで開発したコンピューターカラーマッチングシステム(VCCM)を使って、色合せを行っています。

コンピューターカラーマッチングシステム