色彩の扉
日本の伝統色 -四季編-
「日本の伝統色」の魅力
古(いにしえ)より伝わり、現代に至るまで深く生活の中に息づいた日本特有の色彩感覚は、日本文化の一面として大変価値あるものです。
色彩にみる伝統的美意識は、今日でも共感しうるものとして人々の生活の中に溶け込んでいます。伝統色にはさまざまな由来がありますが、ここでは日本人的感性として取り挙げられることの多い「四季」に因んだいくつかの伝統色を詩的散文とともにご紹介します。
「春」の色
梅の花色がほころぶ早春の、柔らかい風に暖かさを感じる。
草木が萌え、可憐な野の花が春の訪れを告げる。
のどかでうららかな景色に鳥たちの美しい鳴き声が響く。
やがて色とりどりの花が咲き乱れ、薄紅の桜が霞み、
華やかな春の饗宴が繰り広げられる。
桜色
(さくらいろ)
SAKURA IRO紅梅色
(こうばいいろ)
KOUBAI IROねこやなぎ色
(ねこやなぎいろ)
NEKOYANAGI IRO菜の花色
(なのはないろ)
NANOHANA IRO若葉色
(わかばいろ)
WAKABA IRO青藤
(あおふじ)
AOFUJI
「夏」の色
風薫る初夏の空に、色を増す輝く緑。
しっとりとした雨に濡れる花や草のつややかさ。
梅雨を過ぎ、陽光がきらめき、うだるような灼熱に
わきあがる草花の生気。
清冽な川に映る空の色は深く、
大気の流れを汲み、樹木の命がみなぎる。
薄浅葱
(うすあさぎ)
USUASAGI若竹色
(わかたけいろ)
WAKATAKE IRO萱草色
(かぞういろ)
KAZOU IRO露草色
(つゆくさいろ)
TSUYUKUSA IRO小鴨色
(こがもいろ)
KOGAMO IRO杜若色
(かきつばたいろ)
KAKITSUBATA IRO
「秋」の色
澄み渡る青空に気高い雲。
稲・葡萄・柿・栗・梨など、香り豊かに実る作物と樹木。
野山を錦繍のように染める紅葉。
山々を彩る草花の、味わい深く、芳醇な色合い。
艶やかさや穏やかさに、
季節の移り変わりの切なさも感じさせる秋の気配。
茜色
(あかねいろ)
AKANE IRO深支子
(こきくちなし)
KOKIKUCHINASHI竜胆色
(りんどういろ)
RINDOU IRO柿色
(かきいろ)
KAKI IRO栗皮色
(くりかわいろ)
KURIKAWA IRO群青色
(ぐんじょういろ)
GUNJOU IRO
「冬」の色
冷たい風が吹き抜け、木の葉が落ち、
霜と雪が空気まで白く凍らせる冬。
鉛のような空を映した荒寥たる原野。
枯れ寂びた景色が静かに広がり、乾いた風土に墨絵の風情を感じる。
正月飾りの常緑の葉に、
冴えた朱の彩りが新年の祝辞を飾り立てる。
銀鼠
(ぎんねず)
GINNEZU消炭色
(けしずみいろ)
KESHIZUMI IRO薄香色
(うすこういろ)
USUKOU IRO千歳緑
(せんざいみどり)
SENZAIMIDORI朱色
(しゅいろ)
SHU IRO藁色
(わらいろ)
WARA IRO