色彩の扉

紙が違うと色が違う?

 同じデザインを同じインキを使って印刷しても、紙が変わるとガラっと印象が変わる、ということがあります。これは、紙の性質が印刷物の発色に影響を及ぼすからです。なぜ紙の性質により色が変わってしまうのでしょうか?その原因は大きく二つあります。一つは紙の色、もう一つは紙面の性質です。ここではこれらの原因について簡単にご説明します。

(1)「紙の色」が及ぼす影響

 紙に赤い色を塗れば、塗られた部分が赤く見えるのは当然のことです。では、なぜ赤く見えるのかと言うと、インキ中に無数に散らばっている赤色の顔料(色の元となる粒)に光があたり、反射されて赤の波長を持つ色光が目に入ってくるためです。しかし、インキ中のすべての光が顔料に反射・吸収されるわけではありません。一部の光は、顔料の間をすり抜け、紙にあたって反射・吸収されます。白い紙ならば、白色光が反射されますが、ダンボールやクラフト紙などの色のついた紙は、インキの色と一緒に紙の色も反射されるため、インキの赤色に紙の色が混ざって見えます。

紙の色が及ぼす影響

 ダンボールやクラフト紙のように色のついた紙を使う場合、紙の色の影響を減らしてインキの色を再現するためには、より不透明なインキを使う必要があります。例えば、ダンボール印刷に使うフレキソインキは、インキの隠ぺい力を高めることで、紙面に到達する光をできるだけ少なくし、よりよい発色を得られるように設計されています。

(2)「紙面の性質」が及ぼす影響

① 平滑性

 紙は、表面を均一にするために加工されたものと、ザラザラしたものがあります。例えばアート紙は表面が平らになるよう加工されているので、反射する光が均一になり、上質紙に印刷した場合よりも色が鮮やかに見えます。紙の表面が均一であるほど反射する光は均一になり、紙面の色が鮮やかなものとして知覚されます。

紙面の性質が及ぼす影響
紙面の性質が及ぼす影響

 また、平滑性の低い紙ほど印刷後のインキが紙の繊維の間に沈んでしまい、インキの発色が弱くなる傾向があります。アート紙やコート紙のような「コート紙系」の紙よりも、上質紙や更紙などの「非コート紙系」の紙ではその傾向が顕著になります。
 以下はジャパンカラー2007の標準印刷色を使って、コート紙と上質紙の違いをグラフ化したものです。オフセット印刷で標準的に再現できる色の範囲を六角形のグラフで表していますが、コート紙は上質紙と比べて、標準的に再現できる色の範囲(色域)が広いことが分かります。

耐光性試験

 

② 光沢

 印刷面が平滑であるほど、光沢が高くなり、反射してくる光を純粋な色として感じられます。一方で、平滑でない場合には光沢が低くなる、すなわち乱反射する白色光が加わるので、色が薄められて白っぽく感じられるようになります。
 印刷が終わってしまった後で、光沢が不足していると感じたら、ニス加工を追加することで光沢を高めることができます。逆に光りすぎていると感じた場合には、光沢を抑えるマットニスを塗布することで、マット感のある印刷物になります。ニスをうまく活用し、光沢をコントロールしてください。
【ニスのラインナップ】

 

 紙によるこれらの影響をふまえ、それぞれのアートワークにマッチした紙を選択することが、イメージどおりの印刷物の完成につながります。